わたくし行政書士として登録していますが着物屋の店主という側面もあります。
問屋さんとの話やSNSの界隈にて「知識の承継」が話題に上がります。
まだまだ至らぬ点もありますが、ここに様々書き綴っていこうと思います。
こちらを読むうえで注意点があります。
それは「着物は地域ごとのローカルルールが存在する」という点です。
こちらに書くのは「青森県八戸市の着物屋の話」という事でご参考ください。
※画像はAIで作りました。おかしな点は出来る限り直しましたが直しきれていない部分がございます。直しきれないのは私の技術不足です。生暖かい目でご覧ください。
黒留袖

既婚女性の第一礼装である黒留袖です。
一般的には結婚式で新郎新婦のお母様、既婚である親族がお召になります。
画像の通り下部にのみ模様があり、背中・胸元・袖後ろに5つの染抜き紋が入ります。帯締め・帯揚げは白色、黒塗りの金銀扇子を帯にさします。
帯は織物で金糸銀糸を使った袋帯が一般的です。
柄は吉祥文様などおめでたい柄を選びます。
画像では見えませんが長襦袢は白色になります。
半衿は塩瀬の白が基本です。一昔前までは「半衿は絶対塩瀬の白」とされていましたが最近は白地に白刺繍の半衿も許容されてきてまして、刺繍半衿を付ける方もいらっしゃいます。
襟元に見える白い部分は比翼と言います。現在の黒留袖は着物に縫い付けてあります。ただ時々ついていないものをお持ちの方もいらっしゃいます。
以前は襦袢の上に下着と呼ばれる着物と襦袢の間のような白い下着を着てから黒留袖をさらに上から着ていました。
比翼のついてない黒留袖をお持ちの方がいらっしゃった際には「下着と呼ばれる着物と襦袢の間のような白い着物襦袢のようなものがあるはずなので探してみてください」とご案内しています。
現在ではほとんど目にしないのでなかなかわかりづらいですね。
黒留袖を誂る際は「黒留袖+胴裏+比翼地+紋入れ(染抜5つ)+湯のし+撥水加工+仕立」となかなか盛りだくさんの内容です。
紋を入れる際は、見本の紋をスマホで撮ってきていただきます。御仏壇やお墓などにある場合もあるのでそちらでも構いません。画像と紋帳をお客様と確認します。
紋は種類が多く、線の太さなどちょっと違う場合もあるのでここは慎重に見比べていきます。お客様が紋名を覚えている場合にも紋の入っているものをご持参又は画像を撮ってきていただき確認します。
また紋は実家の紋、嫁ぎ先の紋どちらでもかまいません。
経験則でお話しさせて頂くと「誰がお金を出すか」「誂える際の年齢」によって選ぶ方が多いです。またこちらにはありませんが一部地域では「女紋」といって女性が代々受け継いでいく紋がある地域もあります。
紋を入れる際はとても慎重になります。
またお仕立ての中にはぐし縫いも入っています。ぐし縫いとは簡単に言うとしつけ糸より細かく縫われていて取ってはいけない糸です。
しつけ糸と一緒に取らなきゃいけないの?と聞かれる事もありますがこれは取ってはいけません。
草履・バッグは金銀の物をご用意ください。
また着付小物(腰紐・帯板など)ですが、以前は着付小物の色も白色とされていました。が現在はそこまでは求めていないように思っています。一般的なピンクの物で十分です。
※ただ長襦袢に関しては白色です。こちらは守るべきルールになります。
現在は黒留袖の生産はとても少ないです。少人数での結婚式が増えたこと、昔は結婚するお嬢様に作ってあげたけれどもそういった文化も薄れてきたという理由などから購入者が激減したためです。
ほとんどがレンタルで、生産数はおそらく全盛期からすると数百分の1とか数千分の1とかだと思います。
白い帯揚げ帯締めもほぼ市場にない状態です。
こればっかりは時代の流れなので仕方のない事ですね。(弊社はまだまだ黒留袖取り扱っています)
振袖

着物=振袖をイメージする方も多いと思います。
格としては未婚女性の第一礼装となります。
成人式のイメージが強いですが、○○式に出席の際には振袖で問題ありません。
こちらも黒留袖同様様々ルールがあります。が現在は特にルールを重視していないです。言ってしまえば何でもOK状態です。
ですので、「ご家族・ご本人が納得するのが一番」という形になります。
誂える際は「振袖+比翼地(胴裏として)+湯のし+撥水加工+お仕立」となります。袖が長い分胴裏では足りないので弊社では比翼地を胴裏として使っています。
袖の長さについては身長から割り出して決めます。
ですので、他のお嬢様やお母様の振袖をお嬢様が着る際、身長が大きく違うと袖が少し短かったり、逆に長くて引き摺ってしまったりという事があるので注意が必要です。
最近は「ママ振り」といってお母様の振袖を着るお嬢様も増えています。
「振袖の寸法をお嬢様に直す+帯・小物を新しくしてイメージを変える」
「帯・小物を新しくしてイメージを変える」
「小物だけ変えてイメージを変える」
「そのまま小物を使う」
といったパターンに分かれます。「どうしたら・・・」とよくご相談いただきますがどれも正解です。素敵な成人式になるようお手伝いさせて頂きますので、気軽にご相談ください。
着物業界の中心は振袖です。
成人式があるからまだ着物業界があるといっても過言ではないと思います。
とはいえ少子化もあり、少ないパイを沢山の業者で奪い合うといった状況です。
成人式で振袖を着なくなったら業界は終わる。それくらい振袖中心だと思います。
色留袖

色留袖は柄のつき方は黒留袖と同じです。黒留袖の色バージョンと考え下さい。
問題は仕立方と紋の数によって格(フォーマル度)が変化する点です。
格(フォーマル度)は以下の通りです。
5つ紋比翼仕立=黒留袖と同格
3つ紋比翼仕立=茶道や舞踊の方などがお仕立することがあります。結納のもらう側がお召になる場合もあります。
1つ紋比翼仕立=茶道や舞踊の方などがお仕立することがあります。結納のもらう側がお召になる場合もあります。
一つ紋訪問着仕立=紋なし訪問着より格があがります。
紋なし訪問着仕立=訪問着と同格になります。
といった具合です。
黒留袖は既婚者の第一礼装ですが色留袖はそういったルールはなく未婚者でも問題なくお召いただけます。
ですので「振袖は年齢的にちょっと・・・」という未婚の方が親族の結婚式で着物を着る際は「5つ紋比翼仕立」をお召になる場合があります。またご兄弟の結婚しに出席する既婚のお嬢様に「黒留袖ではなく色留袖の方が華やかだから」といった理由で色留袖を選ばれる方もいらっしゃいました。
5つ紋比翼仕立・3つ紋比翼仕立の色留袖ですと黒留袖と同じコーディネートになります。
そして格が下がるごとに「帯締め・帯揚げ・長襦袢」が白色から色物に変化しています。
このようにカメレオンのように格が変わるためちょっとわかりずらいのが欠点です。
黒留袖の生産が少ないと書きましたが色留袖に至っては絶滅危惧種です。製造メーカーも本当に少ないですし、そもそも問屋さんが在庫を持っていないが普通になってきました。
やはり訪問着の方がわかりやすいのでそちらにいってしまうのでしょうね。
喪服

黒い着物に黒い帯の喪の第一礼装です。
未婚・既婚問わずお召いただけます。
ちなみに黒い着物=喪服ではありません。黒い着物+紋が染抜5つ=紋付です。
この紋付+黒共帯=喪服となります。
半衿は塩瀬の白色でそれ以外の小物は全部黒色です。
着付小物も黒で統一していましたが、現在は着付小物は白色で対応する場合も多いです。
紋は黒留袖と同じです。
帯ですが一般的には名古屋帯になります。「悲しみが重ならないように」という理由で一重太鼓の名古屋帯になったと教えられました。が袋帯でも構いません。
以前は喪服は喪服セットとして販売されていました。喪服セットは小物から着物・帯含めて全てセットになった商品です。それを作る際、袋帯の方が価格が高いため名古屋帯にという考えが業界にあったとも聞きました。真意はわりませんが。
ですので、袋帯だからダメという事はないです。弊社は喪服用袋帯も扱っていますし、袋帯を選ばれるお客様もいらっしゃいます。
喪服もお葬式の簡略化や小さなお葬式の普及、レンタルの普及により激減しています。
喪服セットのお話をしましたが、私が入社した20年程度前にはたくさんのメーカー・ブランドの喪服セットがありあましたが、今は喪服セットは一つもありません。(少なくとも弊社の取引先には)
そして着物や帯だけでなく喪服用小物も市場にはほとんどありません。
こちらも黒留袖同様お嫁入りの際持たせるために誂える方が多かったのですが、今はそのような文化はほぼ無くなってしまいました。
今回は第一礼装の着物についてでした。
この第一礼装の着物は購入・誂えではなくほぼレンタルになっています。
そのため着物業界なのにほど商品がないという状態になっているものも多くあります。
残念ですが復活することはないと思います。
ですが、少数でも必要としている方もいらっっしゃるので知識はしっかりと持っておきたいと思います。